観光地をただ巡るよりも、その土地の歴史や文化、人々の暮らしに触れる旅のほうが好きだ。中でも、昔の風情が色濃く残る歴史的な古鎮(こちん)には特別な思い入れがある。そこには、まるで時空を超えて届けられる中国文化の手紙のような、深くて静かな魅力があるのだ。今回紹介するのは、水墨画のような風景が広がる江南の古鎮——嘉興(かこう)にある西塘古鎮(せいとうこちん)。烏鎮のような賑わいもなければ、周庄のような商業感もない。それでも、静かに水路と橋のある町並みを守り続けるその姿には、特別な魅力がある。
目次
西塘古鎮の紹介
西塘古鎮(せいとうこちん)は「西塘古鎮景区」とも呼ばれ、景区の面積は3.03平方キロメートル。うち、古鎮の核心エリアは1.01平方キロ、集落区は2.02平方キロ。千年以上の歴史を持つこの町は、春秋時代に呉の名将・伍子胥(ごししょ)が水路を開発し、漕運(そううん)を通じて「伍子塘(ごしたん)」を築いたことから「胥塘(しょとう)」とも呼ばれてきた。現在は中国国家AAAAA級観光地に指定されている。
- 住所:浙江省嘉興市嘉善県西塘鎮南苑路258号 (Appleマップ / Amap)
- 営業時間:終日開放(チケット売場の稼働時間は8:00〜17:00)
- 所要時間:4〜6時間(宿泊をおすすめ)
- ベストシーズン:オールシーズン
- 入場料:95元。スタッフが不在の早朝(8時前)と夜間(17時以降)は無料で入場可能。祝日の場合、スタッフが退場するのは21時頃になることもあるので注意。
- チケット購入:Trip.com割引、Klook特価

西塘古鎮マップ

みんなが西塘古鎮に行きたがる理由って?
深い歴史と豊かな文化
西塘古鎮は、非常に長い歴史と文化的背景を持っている。春秋戦国時代には呉と越の国境地帯であり、唐代の開元年間には水辺に村落が形成され、南宋時代には市場としての機能も発展。元代以降は「水に沿った町」として定着し、明清時代には江南地方の手工業と商業の中心地にまで成長した。今でも明清建築が多く残り、「生きた千年の古鎮」として、中国文化の重みを感じさせてくれる。
江南ならではの旅体験
西塘では、江南水郷の風情が存分に味わえる。朝は石畳の路地を散策し、静かで素朴な古鎮の空気に癒される。昼には「西園」で評弾(語りと歌)を聴きながら、まるで水墨画の中に入り込んだかのような感覚に包まれる。午後は小舟「烏篷船」に乗り、水路を静かに行き交うひとときを楽しめる。さらに、夜のライトアップも見逃せない。西塘の夜景はアジアの観光業界で賞を受けたこともあり、幻想的な灯りが水面に映る景色は、訪れる人の心をつかんで離さない。
西塘古鎮でできること・見どころガイド
主要スポット
護国随糧王廟(ごこくずいりょうおうびょう)
この廟(びょう)は西塘古鎮の人々の信仰を受け継ぐ由緒ある場所で、明代の抗倭名将・随糧王を祀っている。伝説によれば、彼は民を守り、豊作をもたらしたことから「護国随糧王」として崇敬された。明代に建てられ、何度も修復されているが、当時の木彫や煉瓦彫刻が多く残されている。今でも多くの参拝客が訪れ、西塘古鎮の精神的なシンボルであり、江南地方の民間信仰を研究するうえでも重要な文化遺産だ。

酔園(すいえん)
「園に入れば酔い、景に遊ぶ心」と詠まれる酔園は、典型的な江南スタイルの私邸庭園。小橋に流水、古木が茂り、風景は詩情豊かで洗練されているが、型にはまらない自由さもある。園内を散策すると、美しい書が刻まれた扁額や対聯が目に入り、まるで文人たちが遊び歩いた時代へとタイムスリップしたような感覚になる。写真映えはもちろんのこと、ベンチに座って静かに過ごすのにもぴったりな場所だ。

王宅(おうたく)
王宅は清代の官僚の住居として建てられた、西塘古鎮でも代表的な古建築の一つ。邸宅全体は構造が厳格でスケールも大きく、江南地方の官宅の典型的なスタイルを体現している。内部には木彫、煉瓦彫、石彫が精緻に施され、完璧な保存状態にある。清代の住宅文化や家族制度を研究するうえで貴重な資料であり、豪族たちの生活風景や、江南文化の厚みを体感することができる。

ボタン博物館(钮扣博物馆)
西塘は「ボタンの故郷」として中国全土に知られ、約500社のボタン製造企業があり、年間の生産額は100億元にのぼる。全国市場の約半分を占める一大産地だ。四賢祠弄にあるボタン博物館では、漢代の青銅ボタンから現代のプラスチックボタンまで千点以上を展示しており、時代を超えたボタンの進化をたどることができる。また、伝統的な手工業から現代の軽工業へと発展した西塘の軌跡も、この小さなボタンに凝縮されている。まさに中国の衣文化と地域経済の変遷をつなぐ存在だ。

西塘古鎮チケットガイド
無料で西塘古鎮に入る方法
西塘古鎮には、スタッフが不在の時間帯であれば無料で入場できる。具体的には、朝8時前または夕方17時以降が対象。ただし、祝日の場合は21時頃までスタッフが常駐していることもあるため注意が必要だ。なお、一度古鎮に入ってしまえば、内部のスポットには追加料金がかからない。
古鎮内のホテルに宿泊する場合でもチケットは免除されないが、一部のホテルではチケットが付いてくるプランもある。いずれにしても、一度古鎮に入ってしまえば再入場の必要がないため、前夜に宿泊しておくのが得策だ。
チケット価格
- 大人:95元、祝日の夜間入場は60元
- 子ども:45元(6〜18歳、身長1.2m〜1.5m)
- 学生:45元(大学学部生まで)
- 高齢者:45元(60〜69歳)
- 無料:身長1.2m未満の子ども、70歳以上の高齢者
チケットの購入方法
- オンライン:公式WeChatアカウント(「西塘旅游」)またはサードパーティの予約サイト
- チケット購入:Trip.com割引、Klook特価
- オフライン:現地のチケット売場。通常はオンラインの方が割引あり。
おすすめの西塘古鎮観光ルート
西線のメインゲートからスタートし、以下のルートでめぐるのがおすすめ:西線メインゲート → 煙雨長廊 → 蘭園 → 環秀橋 → 西街 → 安境橋 → 塘東街 → 三棣街 → 安泰橋 → 臥龍橋 → 安善橋 → 第二遊船埠頭 → 送子来鳳橋 → 西塘花巷
- 煙雨長廊:屋根付きの長廊で、雨の日でも濡れずに散策可能。両側にお店が並ぶ。
- 蘭園:煙雨長廊の近くにある小さな庭園。
- 環秀橋:煙雨長廊と西街をつなぐ高い橋。眺めが良く、撮影スポットとして人気。
- 西街:地元の雰囲気が濃厚な通りで、小売店、川沿いのレストラン、民宿が並ぶ。
- 安境橋:西街と塘東街をつなぐ橋。筆者の一番のお気に入りで、安善橋を望む絶景ポイント。
- 塘東街:バーが立ち並ぶ通り。夜には赤提灯が灯り、ロマンチックな雰囲気になる。
- 三棣街:塘東街の北端にある静かな通り。落ち着いた時間を過ごしたい人におすすめ。
- 安泰橋:三棣街と里仁街をつなぐ橋。高さもあり、見晴らしがいい。
- 臥龍橋:西塘の最北端に位置し、北栈街の出入口のすぐそば。橋の下には遊覧船が多数停泊、「愛在西塘」の写真スポットもここにある。
- 安善橋:臥龍橋の南にあるアーチ橋。橋の上からは安境亭と安境橋が望める。
- 第二遊船埠頭:古鎮の中心にある埠頭で、江南水郷らしい風情を堪能できる。
- 送子来鳳橋:一方の側には願掛け札が並び、もう一方の壁には定期的に塗り替えられる落書きがあった。
- 西塘花巷:西塘で最もおすすめのスポット。ただし、目的なく歩いていると見逃しがち。目印は「民謡広場」、ここに有名なランタン通りがある。
西塘古鎮周辺のおすすめグルメ
銭雨曼・懐旧景観レストラン

- おすすめ理由:行列必至の人気店。特に食事時間帯の前に並ぶのがコツ。山鶏の卵とバマ水煮豚足は味が濃くてコラーゲンたっぷり。状元醬方も絶品。桃花十里酒は酸味と甘味がほどよく、アルコール度も低めで女性に人気。
- 住所:嘉興市嘉善県環秀街と銀川路の交差点から北東へ240メートル (Appleマップ / Amap)
- 営業時間:毎日 10:30〜14:00 / 16:30〜21:00
- 平均予算:130元
銭妙芸・蟹みそ麺(西塘店)

- おすすめ理由:蟹みその量が圧倒的。麺一本一本にしっかり絡み、蟹酢と大根の漬物が爽やかな後味を演出。臭みもなく、濃厚で美味。川沿いで写真映えも抜群。歩き疲れた時のカフェ代わりにも最適。
- 住所:嘉興市嘉善県塔湾街18号 (Appleマップ / Amap)
- 営業時間:毎日 10:00〜21:30
- 平均予算:82元
陸氏ワンタン

- おすすめ理由:西塘に複数あるが、戌寅橋下にあるこの店舗が最も歴史が古いとされている。薄皮の小ワンタンは榨菜とともに食べるととても美味。小籠包もその日に蒸されていて、黒酢との相性が抜群。
- 住所:嘉興市嘉善県西塘里仁街18号・戌寅橋下 (Appleマップ / Amap)
- 営業時間:毎日 6:00〜17:00
- 平均予算:15元
西塘古鎮周辺のおすすめホテル
西塘古鎮に訪れたなら、やはり古き良き町並みの中に泊まるのがおすすめです。景区内に宿泊することで、江南水郷の雰囲気を一層深く味わうことができます。
西塘原築・アートリゾートホテル・星空テラス・空中ガーデン・モネの窓・煙雨長廊店

- 交通:西塘古鎮内、詠寧橋から徒歩約5分
- 1泊の料金目安:170 CNY(約3,740円)
- 予約サイト:Trip.com特別価格
- 評価:Trip 9.8点
- 特別なニーズ:ジム、ランドリー利用可
メインストリートから少し入った静かな路地に位置し、観光の喧騒を避けながらも、主要スポットには徒歩でアクセス可能。窓の外には白壁と黒瓦の古風な建物、小橋と水路が広がり、朝夕の光が庭に差し込む様子はまさに絶景。コストパフォーマンスに優れた宿。
客室は伝統と現代の融合をテーマに設計され、木製の梁や彫刻窓など、古民家の趣を残しながらも、寝具・バスルーム・スマート家電などの快適性にも配慮。窓際の茶席で、宿主が用意した地元の香り高いお茶を味わいながら、風鈴の音に耳を傾ければ旅の疲れも癒される。親切なオーナーは、手描きのマップや地元グルメの情報も提供してくれた。
西塘光年ホテル

- 交通:西塘古鎮内、酔園から徒歩約5分
- 1泊の料金目安:457 CNY(約10,060円)
- 予約サイト:Trip.com特別価格
- 評価:Trip 9.6点
- 特別なニーズ:ジム、屋外プール、ファミリールーム、4人部屋あり
北ゲートから入るとすぐにホテルがあり、アクセス抜群。送子来鳳橋までも徒歩7〜8分程度。
ホテルは小さな庭園のような雰囲気で、客室は広々として清潔。アメニティの香りも心地よく、地下駐車場が完備されているので車での訪問にも便利。
上海から西塘古鎮への行き方
時間に余裕があるなら、地下鉄+バスでのんびり向かうのもひとつの方法。ただし所要時間は2〜3時間かかる。駅に近いなら電車+バスも選択肢。高齢の方と一緒なら、観光バスがおすすめ。
観光バス
上海長途バスターミナル南駅から西塘古鎮行きの直通バスあり。下車場所は西塘汽車駅(嘉善北駅)、所要時間は約2時間で料金は約70元。また、上海浦東空港のバスターミナルからも1日2便(11:00と16:40)が運行されており、距離は約298km、料金は95元。空港からのアクセスも便利。
電車+バス
西塘古鎮のある嘉興市には「嘉善南駅(高速鉄道)」と「嘉善駅」がある。上海虹橋駅や上海南駅から嘉善南駅まで高速鉄道で約25分(30元)。そこからK222バスに乗れば西塘古鎮に到着。嘉善駅利用時はK210バスに乗車。
- 駅名:Shanghainan – Jiashannan
- 列車予約:価格を見る
地下鉄+バス
上海市内から地下鉄17号線で朱家角駅まで移動。2番出口を出て示范区3号線のバスに乗れば西塘汽車駅まで直行(5元、約1時間)。市内から地下鉄駅までの移動を含めると、所要時間は2〜3時間、費用は合計で約11元。
杭州から西塘古鎮への行き方
おすすめは観光バス。乗り換え不要で、料金もリーズナブル。杭州九堡バスターミナルから乗車し、約1.5時間で到着。
観光バス
杭州九堡バスターミナルからは1日10便、西塘汽車駅(嘉善北駅)へ直行するバスが運行。発車時刻は6:55、7:45、9:00、10:05、10:55、11:45、13:10、14:10、15:25、18:15。普通席は38元、エアコン席は42元。所要約1.4時間で、乗り換えの手間がないのが魅力。
電車+バス
杭州東駅から高速鉄道で嘉善南駅へ移動し、K222バスに乗れば西塘古鎮へ。所要時間は約40分、費用は約50元。
- 駅名:Hangzhoudong – Jiashannan
- 列車予約:価格を見る
蘇州から西塘古鎮への行き方
時間が不確定なときは、地下鉄+タクシーの組み合わせが便利。2人以上での移動ならコストパフォーマンスも高い。バスターミナルが近いなら観光バスもおすすめ。
観光バス
蘇州北広場バスターミナルおよび蘇州駅から西塘古鎮(西塘汽車駅/嘉善北駅)行きの直通バスあり。ただし1日2便(8:50、14:20)のみ。所要約1.5時間で、料金は25元。
地下鉄+タクシー
地下鉄4号線に乗り、同里駅で下車。その後タクシーで西塘古鎮へ向かう。地下鉄料金は6元、タクシー料金は約60元。所要時間はおよそ2時間。
よくある質問
正直に言って、あまりおすすめできない。多くの観光スポットでは、車椅子を外に置いて歩いて入る必要がある。橋の上り下りにも段差が多く、ベビーカーの使用も不便。
西塘古鎮の南側にある游客センターで、入場チケットがあれば無料で荷物を預けられる。ただし営業時間は17時までなので注意。
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