こんにちは、Michael Zhangです。世界数十か国を旅してきた中国人トラベラーとして、私が常に信じているのは──人の心を打つものは、高層ビルではなく、“物語を語る土地”だということです。中国という広大な国土の中でも、平遥古城(ピンヤオこじょう)のように何千年もの記憶を今に残す場所は、そう多くはありません。この記事では、そんな「生きている古城」に深く踏み込み、ただの観光ではなく、歴史の視点と旅人の感性で、この地に宿る文化や人情を紐解いていきます。
目次
平遥古城の紹介
平遥古城(ピンヤオこじょう)は、現在の中国国内に現存する最も完全な形で保存された古代の県城(県庁所在地の城塞都市)です。その全体の形が南に向かって歩く亀のように見えることから、「亀城(きじょう)」という愛称でも親しまれています。
この古城は、城壁、店舗、通り、寺院、民家などが調和して構成する大規模な建築群で、対称的なレイアウトを持ち、市楼(時計楼)を中心軸、南大街を南北の主軸として、左に城隍廟、右に県衙、左に文廟、右に武廟、東に道教の廟、そして西に仏教寺院が並ぶ、儒教的な礼制に基づいた構造になっています。総面積は2.25平方キロメートルに及びます。
城内の街路構造は「土」の字型で、陰陽五行や八卦の思想に基づいており、4本の大通り、8本の小路、72本の蛇行小路が八卦の図案を形成しています。特に南大街、東大街、西大街、衙門街、城隍廟街は、幹の字の形で商業エリアの中心となっています。
この平遥古城は、中国国家AAAAA級観光地に指定されており、周辺の双林寺や鎮国寺とともにユネスコ世界遺産にも登録されています。
- 住所:山西省晋中市平遥県平遥古城(Appleマップ / Amap)
- 開放時間:終日開放(各観光スポットは8:00〜18:00/ライトアップショーは21:00~、迎薰門広場)
- 所要観光時間:4〜6時間(1日観光が理想)
- ベストシーズン:通年
- チケット:入城無料(各スポットは別途入場料が必要)

平遥古城マップ

みんなが平遥古城に行きたがる理由って?
悠久の歴史
平遥古城の起源は、西周時代の宣王の統治下にさかのぼります。明・清時代になると、地理的な利便性と晋商(しんしょう)と呼ばれる山西商人たちの知恵と胆力によって、中国全土を代表する金融の中心地となりました。現在も残る日昇昌票号などの施設跡からは、当時の金融業の栄華と、商人たちの優れたビジネスセンスが感じられます。
また、この古城はその保存状態が極めて良く、中国に現存する古城の中でも最も完全な形で残っています。都市の構造は市楼を中心に南北軸を貫き、城隍廟や県衙、文廟や武廟、道教や仏教の施設が配置された封建時代特有の礼制的な設計が特徴です。
このような都市設計は、明清時代の都市計画の思想をそのまま具現化しており、今でも「中国古代都市の生きたサンプル」として高く評価されています。
豊かな文化的背景
城内には、日昇昌票号、平遥県衙、文廟など、数多くの歴史的遺産や文化施設が残されています。これらは、古代中国の司法制度や金融システム、儒教文化を今に伝えるものであり、復元された展示空間や臨場感あふれるパフォーマンスを通じて、まるでタイムスリップしたかのような臨場感で、古代の暮らしや人々の営みをリアルに体感することができます。
平遥古城でできること・見どころガイド
主要スポット
平遥文廟(ピンヤオぶんびょう)
平遥文廟は、中国に現存する県レベルの文廟の中で、最も古く、保存状態が最も良いもののひとつです。西漢時代に創建され、その後、宋・元・明・清の各時代にわたり修復・拡張されてきました。境内の建築は厳格な構造と礼制に基づいており、中国古代の教育制度と儒教文化を学ぶうえで極めて貴重な遺産といえます。大成殿の前で静かに立ち止まり、古人が持っていた「儒を尊び、道を重んじる」精神に思いを馳せてみてください。

平遥県衙博物館
古代中国における県レベルの行政中枢として、平遥県衙は封建時代の典型的な官衙建築の代表例です。建物全体の規模が整っており、行政・司法などの機能も明確に設計されています。館内では「昇堂審案(裁判の再現)」という実演ショーが定期的に行われ、当時の裁判の様子をリアルに体験できます。子連れの旅行者や文化好きの方にもぴったりです。
- 公演時間:毎日3~4回(08:30、11:00、15:30)、土日には追加公演16:50あり

日昇昌票号博物館
ここは中国初の票号(古代の銀行)が誕生した場所であり、「中国銀行業の祖」とも称されています。清の道光年間に創設された日昇昌は、山西商人たちのネットワークを中国全土、さらには海外にまで広げました。
館内に一歩足を踏み入れると、まるで19世紀の金融センターにタイムスリップしたかのような空間が広がります。帳房(会計室)、銀庫(銀の保管庫)、秘密通路なども再現されており、中国の伝統商業の知恵と工夫に触れられる絶好の場所です。

中国鏢局博物館
武侠の世界に興味がある方には、ぜひ訪れていただきたいスポットです。この博物館は「同興公鏢局」の跡地に建てられ、古代の保鏢(ボディーガード)文化、鏢師(警備士)の掟や護送ルートなどが紹介されています。
「必ず護送し、任務は必ず果たす」という時代の精神が展示を通じてリアルに感じられ、館内には歴史的価値の高い武器や契約書なども多く展示されています。写真愛好家にも人気のスポットです。

《また会う平遥》大型実景ショー
有名な演出家・王潮歌(ワン・チャオガ)氏によって制作された《また会う平遥(原題:又見平遥)》は、光、音、そして観客が歩きながら鑑賞する“動く劇場”が融合した没入型ショーです。劇場は古城の外に専用施設として設けられており、観客と演者の距離が近く、晋商(山西商人)たちの物語と市民の生活を生き生きと描き出しています。感情に強く訴えかける構成も魅力です。
- 月曜は休演。通常は14:00と19:00の2回公演。繁忙期には追加公演あり。
- チケット購入:Trip.com割引、Klook特価

平遥古城の観光スポットチケット情報
平遥古城そのものには入場料は不要ですが、城壁、票号、鏢局、県衙、文廟などの内部を見学するには別途チケットが必要です。なお、ほとんどの施設は単独でチケットを販売しておらず、22のスポットを一括で回れる「共通チケット」の購入が基本となっています。
チケット料金
- 大人:125 CNY
- 子ども:65 CNY(6歳未満は対象外、6歳〜18歳まで)
- 学生:65 CNY(大学生以下)
- 無料:6歳以下または身長1.2m未満の子ども、60歳以上の高齢者
チケット購入方法
- オンライン:WeChat公式アカウント、または各種旅行予約サイト - チケット購入:Trip.com割引
- オフライン:古城内の県衙チケット売り場にて
おすすめの平遥古城観光ルート
小南門から出発 → 武廟・雷履泰故居 → 平遥県衙博物館 → 迎薰門(城壁登頂) → 文廟 → 城隍廟 → 中華鏢局 → 協同慶 → 市楼 → 日昇昌記 → 馬家大院 → 拱極門 → 《また会う平遥》
- 注意:古城内には車の乗り入れができません。歩くのが難しい方は、観光案内所でシャトルカーについて問い合わせるのがおすすめです。
平遥古城周辺のおすすめグルメ
天元奎飯店(本店)

- おすすめポイント:山西料理の老舗で、平遥でも有名な名店。陳醋牛肉煮込み、龍茄子、牛肉栲栳栳(かくらおらお)が特に人気です。
- 住所:山西省晋中市平遥県古城南大街73号(Appleマップ / Amap)
- 営業時間:毎日 09:00〜23:00
- 平均予算:50 CNY
洪武記飯店

- おすすめポイント:こちらも山西料理の名店。実際に食べてみないとその美味しさは語れません。おすすめは、陳醋牛肉煮込み、酢卵、黄米デザート、酢豚団子など、どれも定番の人気メニューです。
- 住所:山西省晋中市平遥県古城南大街84号(Appleマップ / Amap)
- 営業時間:毎日 10:30〜23:00
- 平均予算:60 CNY
梁先森・ヨーグルト

- おすすめポイント:山西省外ではなかなか味わえない逸品!古城内に1店舗しかなく、老陳醋ヨーグルトと沙棘(サジー)ヨーグルトは店主のオリジナルレシピ。筆者も訪れるたびに必ず買っています。
- 住所:山西省晋中市平遥県古城南大街92号(Appleマップ / Amap)
- 営業時間:毎日 08:00〜23:00
- 平均予算:15 CNY
平遥古城周辺のおすすめホテル
平遥古城内は車両進入禁止のため、観光客は観光センターからシャトルに乗るか、ホテルの送迎サービスを利用する必要があります。そのため、古城内の宿泊施設に滞在する場合は、スーツケースを持って徒歩で入城する必要がありますが、それでも古城内のホテルのほうが雰囲気があり、観光にも便利なためおすすめです。特に「南大街」周辺は古城のメインストリートで、どこへ行くにも便利なうえ、グルメスポットも集中しているエリアです。
平遥居賢閣中国式旅館(平遥古城観光地)
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- 交通:平遥古城内、北門近く
- 1泊の料金目安:128 CNY(約2,560円)
- 予約サイト:Trip.com特別価格
- 評価:Trip 9.7点
- 特別なニーズ:ランドリー、ファミリールーム、4人部屋
観光地に到着するとホテルスタッフが三輪車で迎えに来てくれ、出発時も荷物を北門まで運んでくれます。
部屋は清潔感があり、インテリアも美しく、バスルームも広々。価格を考えると、非常にコスパの高いホテルです。
平遥雍華閣人文中国式旅館

- 交通:平遥古城中心近く
- 1泊の料金目安:185 CNY(約3,700円)
- 予約サイト:Trip.com特別価格
- 評価:Trip 9.8点
- 特別なニーズ:ランドリー、ファミリールーム
立地が非常に良く、賑やかな南大街までは徒歩わずか十数メートル。それでいて静かな環境。高速鉄道駅からの無料送迎もあります。
ベッドの寝心地も良く、清掃状態も問題なし。シャワーの湯量も十分で、伝統的な「カン(暖かい土台の寝台)」があり、ローカルな雰囲気も味わえます。価格も手ごろで、夜は静か、朝は鳥のさえずりで目が覚めるほど自然豊かです。
祁公館(平遥)
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- 交通:平遥古城中心近く
- 1泊の料金目安:551 CNY(約11,020円)
- 予約サイト:Trip.com特別価格
- 評価:Trip 9.7点
- 特別なニーズ:4人部屋
古城中心の東側に位置し、南大街・市楼までもすぐ。徒歩圏内に康乾記飯店や洪武記飯店があり、食事にも便利。
建物自体がまるでアート作品のような美しさで、三進院の構造が整っており清潔。設備も充実しており、朝食の品数も豊富で栄養バランスも◎。庭は広くないですが、細部まで丁寧に装飾されており、他の宿と比べても落ち着いた雰囲気があります。
北京から平遥古城への行き方
北京から平遥古城へ行くには、鉄道利用が最もおすすめです。北京の各駅から出発し、「平遥古城駅」または「平遥駅」へ向かうことができます(注意:「平遥駅」の方が古城に近いですが、「平遥古城駅」は高速鉄道駅で、北京からの所要時間が約7時間短縮されます。急いでいる方には高速鉄道がおすすめです)。
平遥駅に到着したら、古城までは徒歩で十数分。そのため、駅からタクシーでホテルまで行くのが便利で、料金もお手頃です。
- 駅名:Beijing Fengtai – Pingyao Gucheng
- 切符購入:価格を確認する
太原から平遥古城への行き方
太原から平遥古城までも、やはり鉄道が最もおすすめの移動手段です。太原駅または太原南駅から出発し、「平遥古城駅」または「平遥駅」へ行くことができます(補足:「平遥古城駅」は高速鉄道駅ですが、市街地から離れているため、到着後の移動時間を考えると「平遥駅」の方が効率的でコストも抑えられます)。
平遥駅から古城までは徒歩圏内で、タクシーでホテルへ向かうのが便利です。
- 駅名:Taiyuan – Pingyao
- 切符購入:価格を確認する
よくある質問
はい、大丈夫です。古城内は基本的にフラットな地形で、観光スポットもバリアフリーに対応しているため、ベビーカーや車椅子での移動も安心して行えます。
平遥古城の観光案内センターでは、無料で荷物の預かりサービスを提供しています。
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